メール弁慶だった彼
最初はよかったメル友の彼
『メル友』という言葉が流行った十数年前。まだラインがなく、メールでのコミュニケーションが主流の時代でした。
友達の紹介で、メールをする友達、メル友になったSくんと、自己紹介から趣味や好きな食べ物、日常の他愛もない出来事などをメールでやりとりしていました。
メールの返信も比較的早く、内容も面白味があったので気さくな人柄が伺えました。そのうちにお互いの顔が見たいとなり写真を交換すると、外見も悪くない。向こうも私を気に入ったようで、会おうとなりました。
そこからはありきたりながら、デートを重ね、告白されるまでは流れるように事が進みました。ただ、節々で『意外と寡黙なところあるんだな』と感じるところはありましたが、メールのやりとりはやはり面白く、特に気にもしませんでした。むしろギャップがあっていいとすら思っていたのです。
寡黙・気さく?
付き合って1ヶ月が過ぎた頃、デート中は寡黙、メールでは気さく、というアンバランスさに少しずつ違和感を覚えてきました。デート中にメール上の調子で話しかけると反応が冷たく、かと言ってメールで静かな文章を送るとハイテンションで返ってくる…。本当に同一人物?とだんだん不気味に感じてきた私は、避けるようになってきてしまいました。
そんな私の変化を察してか、『俺なんかしたかな?』『俺、口下手だから…』と、彼は自分の二面性を打ち明けるようになりました。しかし私はもう冷めてしまい、フェードアウトを試み、結果自然消滅しました。
そんなある日、偶然街中で会い、気まずい空気が流れるなか、急に腕をつかまれ、デパートの立体駐車場の屋上に連れていかれました。恐怖を感じた私は『きちんと言わなかった。ごめん。別れよう。』と告げて、逃げました。
どんなにメールで気さくでも、文章じゃいくらでも自分を演じられるものだと勉強になったとともに、やはり対面して受けた印象こそその人の人柄だと信じようと思った、苦い体験でした。
対面しないとわからない
口下手なのは誰しも大なり小なりあることなので分かりますし、こちらも話しやすい雰囲気をつくる努力はしますが、二重人格化するほど落差があるのは疲れます。
せめて、言葉にできないことを急に行動に起こさないで下さい。恐怖でしかないです。言葉がなくても通じあえる相手を探したほうがいいかもしれません。
メールで人を見抜ける洞察力があればこんな苦労はしなかったのかなとも思います。