尊敬する先輩が教えてくれたこと
お前が言うなよ!
私の最も尊敬する先輩が亡くなった時の話です。生前、彼は誰に対しても面倒見がよく、芯のある愛情深い人で沢山の人から慕われていました。いつも冗談で、「自分の葬式では、辛気臭い顔をせずみんなで楽しくわいわい過ごしてくれ」と話していました。その彼が病気で亡くなり、みんなが悲しみにくれていた葬儀の夜、普段から人の感情に鈍感で、空気の読めない人が「さあみんな、そんな顔していないで今夜は飲もう!先輩も、自分の葬式では騒げと言ってたじゃないか。」と言い出したのです。その人は別段その先輩と仲が良かった訳でもなく、明らかにただ飲んで騒ぎたいだけという雰囲気がすぐにわかりました。私だけではなく、みんな「お前が言うなよ。楽しくわいわいの意味を完全に誤解してるよ。」と思っていたと思います。
人の気持ちをちゃんと汲める人間
誰でも、仲が良く好きだった人達には、自分の死後悲しい思いをして欲しくないと思います。死は多くの人の心を深く傷つけます。悲しい時、少しでも残された人達で故人の思い出話やこれからの希望などを語りあい、ときには笑って時を過ごして欲しいという意味で「楽しくわいわいしてくれ」と先輩は言ったと思うのです。このことがきっかけで、私も、自分が他者の本当の気持ちに気付かずに行動してしまっていないか、これまでよりさらに他者の言葉や様子を注意して受けとるようになりました。先輩が、最後に、人の気持ちをちゃんと汲める人間になれよと私達に教えてくれたのではないかと思っています。